結結エッセイ11 ALL FOR HAPPY!!! KO-HEY! ARIKAWA

「沖縄に住んでへんかったら、僕、今頃何して暮らしてたんやろなぁ」って思うことが時々あります。多分、画家にはなってへんかったやろなぁ。

僕が沖縄に住んでいるのは、ほんまに偶然です。高校1年生まで住んでいた大阪で阪神大震災に遭ったのを機に、沖縄に嫁いでいた姉を頼って引っ越してきました。当時は今と違って沖縄ブームではなかったので、せっかく沖縄に住むようになったのに、海にも全然行かないで、部活の野球に情熱を注いでいました。でも、20代になって人生の悩みにいくつもぶつかって、生きるか死ぬかという状況に陥っていたとき、ふと、家のベランダにあった灰色のコンクリートのブロックに目が留まったんです。「これに色を塗ったら、ちょっとは世の中が明るく見えるんちゃうか?」って。



その頃は本当にお金が無かったので、イチかバチか、食べるのを我慢して画材を買って、すぐに色を塗りました。そしたらほんまに世界がちょっと変わって見えたんです。それ以来、僕は色というものが持っている力に夢中になりました。それがきっかけで絵にも目覚めて、24歳のときに路上の画家からスタートしました。
今は路上で描くことは無くなったけれど、色の力を信じる気持ちはずっと変わっていません。このことについて今までじっくり考えることはほとんど無かったんですけど、最近、当時の僕が色の魅力に夢中になったのって、沖縄という住環境と無関係ではなかったんだろうなぁと思うようになってきました。

沖縄って、年中鮮やかな色彩に溢れているんです。真冬でもハイビスカスがあちこちに咲いているし、木々の緑も一年を通して豊か。海の色も空の色もどこまでも鮮明で、それを沖縄独特の、白っぽい強い日差しが照らすから、景色はいつもまぶしいほどです。
きっと、あの日の僕がコンクリートブロックに色を塗ろうと思ったのは偶然ではなくて、10代で僕が沖縄に住むようになってから、無意識のうちに自分の中に蓄積してきた沖縄の明るさや自然の色彩というものが、一気に溢れ出した瞬間だったんだと思います。そう思うと、沖縄という環境が僕を画家にしてくれたと言っても過言ではありません。沖縄に住んでて本当に良かったなぁって思うし、沖縄に心から感謝しています。

最近は本土や海外での仕事が増えて沖縄を留守にすることも多くなってきましたが、久しぶりに沖縄に帰ってくると、なんかすごく幸せなんです。やっぱりソーキそばを食べると元気になれるし(笑)。沖縄にたまたま引っ越して来ただけだったはずなのに、いつの間にか僕にとって沖縄は、かけがえのない故郷になっているようです。だから目下の目標は、「いつかアート界のメジャーリーガーになって、沖縄にでっかい恩返しをするぞ!!」っていうこと。これは本気で思ってます。そのためにも今は、一枚でも良い絵を生み出すことが僕の使命だなって思っています。

じゃあ、引き続き、絵を描きますわ。ほな。 KO-HEY! ARIKAWA

KO-HEY! ARIKAWA

PROFILE

KO-HEY! ARIKAWA(アリカワコウヘイ!)

美術作家/クレパス画家


阪神大震災を機に高校時代に沖縄に移住。24歳の時に絵に目覚めた。
県の職員をしながら路上の絵描きからスタートし、1年後には画家として独立。
現在では国内外での展覧会、那覇の町を走る彼の絵が描かれた3台の市内循環バスをはじめ、様々なデザインを手がけている。
沖縄で開催されている展覧会では毎年10000人近い来場者を記録。また、一昨年から全国の百貨店、ロフト等で作品の版画が発売されている。
去年、ソウルの韓国美術館で作品群が常設展示されるなど、絵を描き始めて数年で沖縄を代表するアーティストに成長した。

次回予告

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